インタビューと論文特集
ケニス・コジック教授とタール・シャーフ博士へのインタビュー
タール・シャーフ博士、ケニス・コジック教授らは、“Human brain organoid networks”と題する最新の研究成果のプレプリントを発表し、改訂作業中です。この研究は、オルガノイド内の神経回路の生理的挙動を探ることを目的としており、ヒトの脳オルガノイドは、十分なサイズ、細胞配向、機能的結合性を有する自己組織化された神経細胞集合体であり、その集合的膜貫通型電流から共活性化し電界電位を発生させ、スパイクアクティビティにフェーズロックすることを実証しています。これらの結果から、精神神経疾患、薬物メカニズム、外部刺激による神経細胞ネットワークへの影響などの研究に対する脳オルガノイドの可能性を明らかにしました。ヒト脳オルガノイドの素晴らしいケンとタールの研究について伺いました。また、どのようにMaxOne が彼らの研究に役立ったかも分かりますので、ぜひお読みください。
イタンビュー参加者の紹介
Prof. Kenneth S. Kosik Principal Investigator UC Santa Barbara California, USA | Dr. Tal Sharf Postdoctoral Researcher UC Santa Barbara California, USA | Dr. Marie Obien CCO MaxWell Biosystems Zurich, Switzerland |
インタビュー
MaxOneが世に出た同じ時期に、私たちのラボでは脳内オルガノイドの培養を始めていて、2つの技術は収斂していきました。MaxOneを使って解離した培養物の活動を記録していくうちに、さらなる探求の方向性が見えてきました。私たちがオルガノイドに重点を置いたのは、脳の配線、遺伝学、創薬に関する疑問について多くの可能性を開くためでした。オルガノイドは、他の方法では得られない脳回路へのアクセスを可能にしました。
以前、シンユエ・ユアンらが短時間での相互作用について2次元培養で報告したもの(2020, Nature Communications) と同様の実験をオルガノイドで行い、接続強度の分布を見ることで非常に興味深いことを発見しました。それらの接続強度分布は、抗不安-催眠薬であるジアゼパムという薬によって乱されるということがわかりました。また、これらの摂動は病理学的な状態でも明白だという証拠が大量にあります。この側面は根本的には注目され、病理学的な状態や遺伝子変異に関係する特徴を明らかにすることが可能になりました。
それを実現できたのは、MaxOneを使っての方法以外ではあり得ないと思っています。私たちはデータを報告する際、1つのオルガノイドに頼るのではなく、6~7個ものオルガノイドからの記録を発表するようにしています。それぞれの回路を組み立てると、全てのオルガノイドに共通する何かが見えてくるのです。それは、少数の強い結合と多数の弱い結合のような特徴です。その分布を見て曲線を描くと、分布の形はすべてのオルガノイドにある一般的な特徴が見られ、それは薬物や遺伝子の突然変異があると変化する可能性があることがわかったのです。
もう一つの特徴は、スパイク間インターバルの確率分布です。フィッティングを整理したところ、指数関数に合う分布もあれば、正規曲線に合う分布もあり、既知の分布に合わないものも多くあることがわかりました。スパイク間インターバルについてこのような確率分布を設定できるということは、遺伝学や薬学に移行したときに、また別のパラメータを探索することが可能ということです。
これらはどのように解釈されますか?
より多くのチャンネルを選べたら良いですよね。シンユエ・ユアンら(2020, Nature Communications)が報告したように、デュアルモードチップは19000の電極で同時に記録することができ、これは本当に素晴らしいことです。とはいえ、途方もない量のデータを記録するのではなく、その場でアクティビティスキャンをしてから、上位に構成されたチャネルを選択できると最高ですね!
私たちMaxWell Biosystemsは、タール・シャーフ博士、ケニス・コジック教授、および共著者の皆様の、脳オルガノイド研究におけるMaxOne/MaxTwo HD-MEAプラットフォームの注目すべきアプリケーション例となるこの重要な研究成果をお祝いいたします。
ケンとタールにこの研究における個人的な洞察を伺わせていただことに、私たちは非常に感謝しています。オルガノイド研究の将来に向けて、研究者の皆さんがこの基本的な研究をどのように構築していくのかを注目しています。
これからも研究グループを紹介させていただきますので、楽しみにお待ちください。
引用
Tal Sharf, Tjitse van der Molen, Stella M.K. Glasauer, Elmer Guzman, Alessio P. Buccino, Gabriel Luna, Zhouwei Cheng, Morgane Audouard, Kamalini G. Ranasinghe, Kiwamu Kudo, Srikantan S. Nagarajan, Kenneth R. Tovar, Linda R. Petzold, Andreas Hierlemann, Paul K. Hansma, Kenneth S. Kosik, Human brain organoid networks, bioRxiv, September 2021.
bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2021.01.28.428643
Short Bio
Kenneth S. Kosik is the Harriman Professor of Neuroscience Research and Co-Director of the Neuroscience Research Institute at the University of California, Santa Barbara. Kosik Lab intends to create an intellectual setting conducive to the exploration of fundamental biological processes, particularly those related to the brain and its evolution, and is interested in the underlying molecular basis of plasticity, particularly how protein translation at the synapse affects learning and how impairments of plasticity lead to neurodegenerative diseases.
Tal Sharf is a Postdoctoral Reasearcher in Kosik Lab at the UC Santa Barbara. By utilizing techniques at the intersection of physical science and biology, Tal is developing devices and techniques to investigate neural circuitry with the aim to uncover general rules to explain how they malfunction with disease and mental illness.
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