Cell Story Challenge 受賞者

私たちは初めてのMxW Cell Story Challengeの受賞者をご報告することを大変光栄に思っております。

Lill Eva Johansen(リル・エヴァ・ヨハンセン)

ユトレヒト大学大学病院 ルドルフ・マグナス脳センター(オランダ)

神経回路発生と疾病ラボ – Dr. Jeroen Pasterkamp

研究課題: ヒトiPS細胞由来の運動ニューロンを用いた多巣性運動ニューロパチーの生体外モデルにおける神経伝導についての調査

背景と動機:多巣性運動ニューロパチー(MMN)は伝導性がブロックされる電気生理学的特徴を伴う運動ニューロン特有の自己免疫性ニューパチーであり、四肢の末梢において非対称な脆弱性を引き起こしますが、健康なドナーからプールした免疫グロブリン(Ig)の治療によって部分的に症状を反転させることができます。iPS細胞由来の運動ニューロンにMMN患者の血清を与えることでMMN疾患モデルを初めて作成し、ガングリオサイドGM1に対するIgM自己抗体が生体外で疾患を引き起こすことを示しました(Harschitz他 2016)。私たちはMMN血清が持つカルシウム恒常性への複合的効果を報告しました。それは補体因子の存在下で構造的損傷を伴う持続的増加、並びにイオンチャネル制御におけるGM1の生理学的役割の阻害に関連し得る補体非依存の一時的なスパイクです。しかしながら私達はカルシウムの調節不全がこのモデルの信号伝達にどのように影響するかをまだ解明していません。活動電位伝播の調査によってモデルの生物学的妥当性を理解し、そしてMMNの被験薬候補の有効性をテストする新しい方法を提供し得るでしょう。

高解像度電気生理学実験の提案iPS細胞由来運動ニューロンを健康と疾患の両方の状態で活動電位伝播を追跡。MaxWell MEAが蛍光イメージングとの併用が可能であることを利用して、事後染色によって培養において運動ニューロンを他のニューロンと区別し、生体外でGM1に対するIgM抗体が伝導遅延あるいは遮断することが可能かの調査。運動ニューロン特異的なMMNの性質が生体外で再現できるかの調査。もし活動電位伝播に対する影響が見られた場合、Igまたは他の薬物候補によってレスキュー可能かどうかのテスト。

Łukasz Bijoch(ウーカシュ・ビーヨホ)

ネンキ実験生物学研究所(ポーランド)

神経生物学研究室 – Dr. Leszek Kaczmarek

研究課題: 私の研究課題は最も複雑な認知能力の一つである「学習」を理解することです。異なる記憶をどのように形作り、保管し、処理するかを理解したいと思っています。数十年前、学習中に活動している細胞はシナプス可塑性と呼ばれる過程を経ることが示されました。そのような可塑的変化は樹上突起にて見られ、さらなる実験によって、そのような変化をする細胞はc-Fosという特定のタンパク質の存在を追跡することによって局在化されることが明らかにされました。c-Fosはエングラム(コード化記憶)を生成した細胞に確実に存在し、そのような神経細胞の核の中に局在します。このことにより記憶を保管するニューラルネットワークを識別できますが、識別できるレベルは単一細胞レベルです。適切な技術の欠如のために、エングラムが神経回路で樹状突起上の変化においてどのように暗号化されているかわかりません。

背景と動機: 学部時代から私の興味はシナプス可塑性に絞られていました。それは記憶形成の基礎となる一般的な現象です。神経生物学研究室に所属する博士課程の学生となり、今はこの分野の実験的に研究できる立場にあります。PhD課程での私の研究目標は、異なるタイプの学習状況の中で、扁桃体と海馬における記憶形成の規則を定義付けることです。私の研究では電気生理学的実験を主に行っており、パッチクランプ法と光遺伝的アプローチを組み合わせています。

高解像度電気生理学実験の提案: 私はエングラムを生成する海馬ニューロンの樹状突起スパインの受容野をマッピングするプロジェクトを提案します。c-Fosタンパク質のプロモーター下で(青や赤色の光によって活性化される)チャネルロドプシンに関する情報をもたらす異なったウイルスを使用します。これらのウイルスは聴覚および視覚皮質にそれぞれ注入されます。そして動物はまず聴覚的に欲求をそそる条件付けを経験し、次に視覚的刺激を受けます。c-Fosタンパク質はシナプスの可塑的変化(学習に関与する)を経験する神経細胞内のみに発現し、引き続きチャネルロドプシンがこれらの細胞表面に現れるでしょう。条件付けが安定してから動物を殺し、急性海馬スライスを集め、MaxOne MEAチップ上に置きます。青や赤色のレーザーは聴覚および視覚皮質から刺激投射に使われます。異なる場所の神経活動は聴覚あるい視覚信号に反応して記録されます。異なる学習に関わる特定神経細胞の樹状突起スパインへのシナプス入力は局在した樹状突起事象に関連しているでしょう。異なった様式は異なった反応パターンを形成します。それは異なったエングラムとして認識されます。そしてこれが脳におけるコンテキストに依存したエングラムの最初の記述になります。

MxW Cell Story Challengeは若い科学者たちが自分たちで選択した国際的な学会に出席し、彼らの研究を発表し、またその分野の仲間たちと知り合い共同研究できることをサポートすることを目的としています。もしあなたの研究分野が細胞培養(初代齧歯類またはiPS細胞由来の神経細胞および心筋細胞)、3D組織(脳スライス、オルガノイド、網膜)、または電気発生細胞を伴う他の生物サンプルの機能解析でしたら、このChallengeに応募する権利があります。MaxWell Biosystemsでは私達の高解像度電気生理学プラットフォームがどのようにあなた方の研究プロジェクトに役立つかを知ることに興味があります。

次の開催までご期待ください。お問い合わせは info@mxwbio.com まで。