MaxWell Monthly Must-Reads ブログにようこそ! 新年を迎え、今年も新たな特集論文やトピックを発掘し、毎月テーマに沿った5本のおススメ論文を紹介していきます。昨年はHuman iPSC-Derived Neurons(ヒトiPS細胞由来神経細胞) から COVID-19による特別編集 Neurons and Viruses(ニューロンとウィルス)まで、様々なトピックを取り上げました。2021年最初の号はFunctional Connectivity in Neuronal Networks (神経回路網の機能的結合性) についてお届けします。

ご存知のように、神経細胞は生体外で接続し、機能的な回路を形成しています。Microelectrode array (MEA) technology(微小電極アレイ技術)はシナプスで接続された何千もの神経細胞の活動電位を同時に記録することができます。 さらに、この技術は機能的結合指標によって、生体外で神経回路網の結合度を定量化することを可能にします。機能的結合指標は、活動電位時系列間の相関を評価することで計算され、二次元および三次元の細胞培養 を特徴とするニューロンサンプルで測定することが可能です。巻頭特集は、CMOS-ナノ電極アレイを用いて直接シナプス信号の細胞外記録を測定したAbbotらによって執筆された論文です。要約はこちらです

Extracellular recording of direct synaptic signals with a CMOS-nanoelectrode array.
(CMOS-ナノ電極アレイによる直接シナプス信号の細胞外記録)

Jeffrey Abbott, Tianyang Ye, Keith Krenek, Rona S. Gertner, Wenxuan Wu, Han Sae Jung, Donhee Ham, Hongkun Park. Lab on a Chip. 2020年7月.

Abbottらは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS) ナノ電極アレイ(CNEA) がラットの神経細胞の直接シナプス接続を細胞外で測定可能にしました。彼らはシナプス前軸索とシナプス後樹状突起/細胞体が重なる領域で約1pA細胞外シナプス信号を同定しました。神経細胞間の機能的結合性は、軸索伝播信号に続くシンプス信号とそれぞれの時間の相関分析によって確認されました。電気刺激はAMPA受容体を遮断する薬物アプリケーションに応じて、ネットワーク活動を再現可能に誘発し、神経細胞のシナプス結合強度を測定するためにうまく使用されました。活動電位時系列の相関分析のみでは直接シナプス結合を同定することはできません。Abbottらはシナプス前軸索とシナプス後細胞体/樹状突起が局在化する領域で細胞外シナプス信号を測定する方法を提示しました。

論文は こちら

巻頭特集にAbbottらの論文を選びましたが、神経回路網に置ける機能的結合性のトピックを掘り下げた4本の論文をご紹介します:

  1. Modular microstructure design to build neuronal networks of defined functional connectivity.
    (定義された機能的結合性の神経回路を構築するモジュラーミクロ構造デザイン)

    Csaba Forró, Greta Thompson-Steckel, Sean Weaver, Serge Weydert, Stephan Ihle, Harald Dermutz, Mathias J. Aebersold, Raphael Pilz, László Demkó, János Vörös. Biosensors and Bioelectronics. 2018年12月.
    論文は こちら
  2. Large-Scale Mapping of Axonal Arbors Using High-Density Microelectrode Arrays.
    (高密度微小電極アレイを用いた軸索側枝のラージスケールマッピング)

    Torsten Bullmann, Milos Radivojevic, Stefan T. Huber, Kosmas Deligkaris, Andreas Hierlemann, Urs Frey. Frontiers in Cellular Neuroscience. 2019年9月.
    論文は こちら
  3. Cerebral organoids at the air–liquid interface generate diverse nerve tracts with functional output.
    (気相-液相界面の大脳オルガノイドは、機能的な出力を備えた多様な神経路を生成する)

    Stefano L. Giandomenico, Susanna B. Mierau, George M. Gibbons, Lea M. D. Wenger, Laura Masullo, Timothy Sit, Magdalena Sutcliffe, Jerome Boulanger, Marco Tripodi, Emmanuel Derivery, Ole Paulsen, András Lakatos, Madeline A. Lancaster. Nature Neuroscience. 2019年3月.
    論文は こちら
  4. Emergence of Rich-Club Topology and Coordinated Dynamics in Development of Hippocampal Functional Networks In Vitro.
    (生体外での海馬機能回路の開発におけるリッチ・クラブ・トポロジーと協調ダイナミクスの発生)

    Manuel S. Schroeter, Paul Charlesworth, Manfred G. Kitzbichler, Ole Paulsen, Edward T. Bullmore. Journal of Neuroscience. 2015年4月.
    論文は こちら

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